2015 IPC陸上マラソン世界選手権

毎年4月に開催されるアボット・ワールドマラソンメジャーズの1つ、ヴァージン・マネー・ロンドンマラソン。1983年に車いすの部の開催が始まり、例年はT53/54クラスの選手がレースを行っています。そのロンドンマラソンですが、今年はIPC陸上マラソン選手権として開催。2年に1度開催されるIPC陸上世界選手権は、今年10月にドーハ開催が決まっていますが、マラソンのみロンドンへ切り出して行うこととなったためです。2012年のロンドンパラリンピック成功は言うまでもありませんが、その後のパラスポーツ大会の運営が非常に評価されたため、また、T53/54の年間マラソンスケジュールを考慮したためと言われています。

車いすマラソンの花形とも言えるT53/54クラスでは、年々賞金額が充実してきています。今回のロンドンマラソン優勝賞金は男女同額の2万米ドル。コースレコードボーナスは5千米ドルとなっています。また、2013年から導入された「The Boston London Wheelchair Challenge」では、4月20日のボストンマラソンとロンドンマラソンのそれぞれで順位によってポイントが与えられ、2レースのポイント合計が最も多い選手に1万米ドルが贈られます。さらに2016年のボストンマラソンからは、アボット・ワールドマラソンメジャーズの年間ポイントレースの対象となり、年間王者は5万米ドルを獲得することが先日発表されているなど、金銭面での環境整備がスピード感を持って進められているのが現状です。

今大会では以下の6クラスのレースが行われました。各クラスの概要を理解のため簡単に記載していますが、クラス分け詳細については、日本パラ陸上競技連盟のクラス分け委員会ページに掲載されている一覧表をご覧ください。

  • T11/12(視覚) 男女
  • T13(視覚。視力0.03~0.1) 男子のみ
  • T42/43/44(下肢) 男子のみ
  • T45/46(上肢) 男子のみ
  • T51/52(車いす。上肢機能制限あり) 男子のみ
  • T53/54(車いす) 男女

ここでは、クラス毎のゴールシーンを優勝者タイムの順にお伝えします。レース日のロンドンは朝から降った雨で路面が濡れ、気温も10度ほどまでしか上がらない寒さに包まれていました。

2015 IPCマラソン世界選手権
バッキンガム宮殿から伸びるザ・マル(The Mall)に置かれたゴール地点

■男子T53/54
先週のボストンマラソンを制したマルセル・フグ選手(スイス)が20kmを前にしてパンクで離脱。優勝候補が1人リタイアしたレースは、大きく逃げる選手もなく、7人が先頭集団を形成したままラスト200mの直線に入りました。先頭のデイビッド・ウェア選手(イギリス)が地元観客の大声援を受け、7度目のロンドンマラソン優勝へ迫ります。しかし2番手につけていたジョシュア・ジョージ選手(アメリカ)が見事に差し、タイム1時間31分31秒で、IPC陸上マラソン選手権、ロンドンマラソンいずれも初優勝を果たしました。

3位には日本の副島正純選手が、ピエール・フェアバンク選手(フランス)との接戦を制して入ります。同じく日本の洞ノ上浩太選手は、ゴール直前での接触に巻き込まれ7位に終わりました。

2015 IPCマラソン世界選手権
7人でのゴールスプリントに大声援が送られる

2015 IPCマラソン世界選手権 ジョシュア・ジョージ選手、デイビッド・ウェア選手
拳を突き出してゴールするジョシュア・ジョージ選手

2015 IPCマラソン世界選手権 副島選手、ピエール・フェアバンク選手
副島選手が3位の座を勝ち取った

■女子T53/54
“The Beast”の異名を取るアメリカのタチアナ・マクファーデン選手が1時間41分14秒と、2013年世界選手権優勝のマヌエラ・シェル選手(スイス)に2分半の差をつけて快勝。マクファーデン選手は世界選手権初優勝、ロンドンマラソン3連覇とし、女王の地位が揺るぎないことを改めて世界に知らしめました。

2015 IPCマラソン世界選手権 タチアナ・マクファーデン選手
自らのコースレコードを4分も更新する圧倒的な勝利を見せつけたタチアナ・マクファーデン選手

■男子T51/52
ライバルのサンティアゴ・サンス選手(スペイン)を破ったレイモンド・マーティン選手(アメリカ)が、1時間52分27秒で優勝。2012年のロンドンパラリンピックで4つの金メダル(100m,200m,400m,800m)を獲得したマーティン選手が、再びロンドンで戴冠を果たしました。

2015 IPCマラソン世界選手権 レイモンド・マーティン選手
レイモンド・マーティン選手

■男子T11/12
エル・アミン・シャントゥフ選手(モロッコ)が2時間21分33秒の世界新記録で優勝。日本の堀越信司選手が2時間27分42秒で3位に入り、日本盲人マラソン協会が設定した条件をクリアしたため、2016年のリオデジャネイロパラリンピック推薦候補第1位内定が決まりました。

2015 IPCマラソン世界選手権 El Amin Chentouf
世界新記録のエル・アミン・シャントゥフ選手

2015 IPCマラソン世界選手権 堀越選手
3位でゴールする堀越選手

■男子T45/46
モロッコ生まれのスペイン人、2012年ロンドンパラリンピック銀メダリストのアブデラマン・アイト・カモウチ選手が、T46世界新記録の2時間26分54秒で優勝。2位にはブラジルのアレックス・ピレス・ダ・シウバ選手が入っています。

2015 IPCマラソン世界選手権 Abderrahman Ait Khamouch
アブデラマン・アイト・カモウチ選手

■男子T13
アニセト・アントニオ・ドス・サントス選手(ブラジル)が2時間35分42秒でゴールテープを切りました。27秒差の2位にはユセフ・ベニブラヒム選手(モロッコ)が入りました。

2015 IPCマラソン世界選手権 ドス・サントス選手
アニセト・アントニオ・ドス・サントス選手

■女子T11/12
トラック競技で多くの金メダルを持つ、ロシアのエレナ・ポートヴァ選手が優勝。タイム2時間58分23秒はT12世界新記録でした。日本の道下美里選手が3時間03分26秒で3位に入り、2016年リオデジャネイロパラリンピック推薦候補第1位内定を勝ち取っています。

2015 IPCマラソン世界選手権 エレナ・ポートヴァ選手
エレナ・ポートヴァ選手

2015 IPCマラソン世界選手権 道下選手
道下選手は3位でゴールした

■男子T42/43/44
イスラエルのエイタン・ハーモン選手が孤独なレースを3時間7分10秒で完走しました。

2015 IPCマラソン世界選手権 エイタン・ハーモン選手
エイタン・ハーモン選手。2006年の第2次レバノン戦争で負傷した彼は、義足で走るために自ら右足切断を決断した。

■大会結果
<男子T53/54 上位結果(完走43名)>
1.Joshua George(アメリカ/T53) 1時間31分31秒
2.David Weir(イギリス/T54) 1時間31分32秒
3.副島正純(日本/T54) 1時間31分33秒

7.洞ノ上浩太(日本/T54) 1時間32分22秒
11.吉田竜太(日本/T54) 1時間35分35秒
17.西田宗城(日本/T54) 1時間41分48秒
18.山本浩之(日本/T54) 1時間43分29秒
28.久保恒造(日本/T54) 1時間50分58秒

<女子T53/54 上位結果(完走10名)>
1.Tatyana Mcfadden(アメリカ/T54) 1時間41分14秒
2.Manuela Schaer(スイス/T54) 1時間43分56秒
3.Amanda Mcgrory(アメリカ/T53) 1時間46分25秒

7.土田和歌子(日本/T54) 1時間56分48秒

<男子T51/52 上位結果(完走6名)>
1.Raymond Martin(アメリカ/T52) 1時間52分27秒
2.Santiago Sanz(スペイン/T52) 1時間53分33秒
3.Cristian Torres(コロンビア/T52) 2時間08分52秒

5.上与那原寛和(日本/T52) 2時間40分08秒

<男子T11/12 上位結果(完走16名)>
1.El Amin Chentouf(モロッコ/T12) 2時間21分33秒(T12世界新記録)
2.Alberto Suarez Laso(スペイン/T12) 2時間21分47秒
3.堀越信司(日本/T12) 2時間27分42秒

4.岡村正広(日本/T12) 2時間31分40秒
5.熊谷豊(日本/T12) 2時間37分48秒 
13.羽立祐人(日本/T12)/大槻学、石橋恭(ガイド) 2時間49分12秒

<男子T45/46 上位結果(完走11名)>
1.Abderrahman Ait Khamouch(スペイン/T46) 2時間26分54秒(T46世界新記録)
2.Alex Pires Da Silva(ブラジル/T46) 2時間27分36秒
3.Alessandro Di Lello(イタリア/T46) 2時間31分25秒

<男子T13 上位結果(完走5名)>
1.Aniceto Antonio Dos Santos(ブラジル/T13) 2時間35分42秒
2.Youssef Benibrahim(モロッコ/T13) 2時間36分07秒
3.Tim Prendergast(イギリス/T13) 2時間47分23秒

<女子T11/12 上位結果(完走9名)>
1.Elena Pautova(ロシア/T12) 2時間58分23秒(T12世界新記録)
2.Elena Congost(スペイン/T12) 3時間02分50秒
3.道下美里(日本/T12)/樋口敬洋、堀内規生(ガイド)3時間03分26秒

5.西島美保子(日本/T12)/溝渕学(ガイド) 3時間21分02秒
6.藤井由美子(日本/T12)/橋本寛明(ガイド) 3時間22分32秒
9.安部直美(日本/T12)/成田フサイ、松原衣里(ガイド) 3時間47分36秒

<男子T42/43/44 上位結果(完走1名)>
1.Eitan Hermon(イスラエル/T44) 3時間07分10秒

※大会詳細情報・結果は、大会公式HPをご覧下さい
(取材:水上航太郎/セプティメルスポーツ)

※「パラリンピック内定」の表現が誤りだったため、「推薦候補第1位内定」に修正致しました。

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